失敗を防ぐために

佐野

佐野 2015年12月9日

今回は少々趣旨を変えて、失敗について考えていきたいと思っております。

最近、私のほうは、以下の記事を読んでおりました。

人間のうっかりミス「ヒューマンエラー」の原因と対策
humanerror
http://www.humanerror.jp/

業種を問わず、ミスというものはあります。
私も過去の職歴は、全く異なる製造業などですが、
ミス対策の面では、昔も今も変わらないものであり、
上記サイトが、すごくわかりやすく、参考になりました。
読めば読むほど、過去の経験がフラッシュバックするような気がしました。

弊社では設定を行う事が作業である事は多いですが、
それらを手順として理解していく事は、製造業もITも何ら変わりのない部分だと思います。

そして、あらゆる問題にも活用できる汎用的な対策が「チェック」です。
「チェック」は、一度やり終えた作業に間違いがないかどうかを検査する作業ですが、
問題なのは、必ず「チェック」を適用すればいいという話ではないという事です。

失敗をするたびに何も考えずにチェックを導入したところで、
チェック自体が作業となり、工程自体が肥大化し、
制限時間のあるライン作業では時間がなくなり、
それ以外の作業にしても、必要な工程数の増加による混乱の元になります。

作業を行うにしても、作業の意味を知る必要があります。
ただ言われた事を把握し、言われた通りに作業を行うだけでは、実力がついたとも言えませんし、
その間にイレギュラーが発生しても、対応しきれるわけがありません。
イレギュラーが発生しないように作業者が注意すればいいと言うのなら、
人間とは完璧に動けるものなのか、また完璧に動かせる指示が行えるのでしょうか。

それに、作業の動作だけを把握した状態での作業も、危険が伴います。
作業により生成したものの良品か不良品の判断基準がわからなければ、
知らないうちに不良品を大量生産してしまいます。

不良品を検査するにしても実際に検査させてみて、
「この人は不要な部分まで発見するからルーペは不要」だとか、
「この人は問題のある部分を見つけられなかったからメガネをかける必要がある」
などのように調整を行う事は、パーツ取り換えの効く機械と同じ扱いです。

そうではなく、検査に必要な箇所と、不良品と判断するべき基準を与えれば、
よほどの事がない限りは、誰でも正しい検査は可能なはずです。

また、機械が古くて出力が不安定である場合、
それこそ人に一定の動作だけをさせる事は、大量の不良品を見逃す原因にもなります。

話はやや変わりますが、端末からデータを吸い出して保護する際に、
端末に接続するケーブルにヒビが入って接触不良が度々起こっているようであれば、
本来なら抽出できたはずのデータも、「端末の損壊により抽出不能」という結果にもなります。
それも、作業の意味を理解させず、ただ行動だけ指示しているなら、なおさらです。

機械や道具が多少古いのは、経済的にも大変だからでしょうが、
不安定ながらも、出力するべき結果を把握しておく事で、技術で補う事も可能になります。
機械が行えない事を、人間が部品となって補助するのではなく、
結局は人間が機械を扱って作業していなければならないのです。

作業の意味を知るという事は、自分のやっている作業に自信を持つ事ができます。
それゆえに、イレギュラーが発生しても、発見や対処が行えるわけですし、
作業の内容がわかっているからこそ、より完成度の高い物が出来上がります。

また、失敗をしないような工夫もするべきです。
作業が冗長かつ複雑になりすぎていないか、作業手順も現行のものが適切に伝達されているか、
物理的にも失敗が不可能な状況もしくは失敗してもダメージが少なく出来ているか。
チェックや確実な動作に神経をすり減らさずとも、改善できる部分は多数あるはずです。

そして、改善できる環境でもあるべきです。
特に、どこを改善するべきかどうかは、実際に失敗した本人がよく知っているはずです。
その人が失敗した犯人だからと言って、有無を言わさずに合わない改善方法を無理やり指示したり、
失敗した理由を言い訳だと言ったりしているようでは、改善には程遠いでしょう。
プログラムで言うならば、出力されたエラーメッセージやエラー行の情報を握りつぶすような愚かな行為です。

しかし、作業者が知らない事も、もちろんあります。
知らずに作ってしまった不良品、その不良品を作業者に突きつけて
「わかる?」などと質問するのは愚の骨頂です。
それで「わからないなら聞け」と言っても、「わからない」のではなく「知らない」からこそ起きた事であり、
「知らない」という事はヒントそのものがないため、「聞きようがない」という事でもあります。
「知らないでは済まされない」のであれば、必要な事を全て知る事のできる環境にするべきです。

私自身も言えた義理ではないかもしれませんが、作業者をただ攻めるばかりでなく、
視点を変えて作業者がどのような気持ちだったのかを考察するべきではないかとも思います。

また、社内での情報管理も、しっかりとするべきです。
作業指導書や仕様書も、経験者でなくても現行の作業と食い違うほど古いままでは、何の意味もなしません。
しかし、本番の作業ではない行動や準備を「余計な行動」や「作業が遅れている」と見なしているようでは、
資料作成ができないのはもちろん、他人にはバレないように作業を省略する可能性もあります。
作業者本人がメモを取るにしても、限られたほんのわずかな時間や、
忙しい中でも頭の中に記憶した情報を、曖昧ながらも業務時間外にまとめていくしかありませんし、
そのような状況では会社で認可された指導書や仕様書は、いつまでも古いままです。

社内資料を作らない会社では、いつまでも作業者自身のメモに頼り、
教える側も教わる側の負担が、いつまでたっても軽減されないどころか、
メモが流出すれば情報漏洩の可能性も生じます。

作業者の負担と言えば、「同じ人間だからできる」という精神論は捨てるべきです。
同じ人間であっても、得意・苦手な分野、考え方の違いは当然あるべきですし、
なにより経験の差を考慮せずに、新人にベテランの作業を行わせるのは危険な行為です。
また、作業者に対し過度な叱責を与える事も、作業者への精神的負担になるほか、
どのみち叱責を受けるのなら、あざむこうという賭けに出る事もあれば、
叱責に慣れてしまい、何も感じないようになる事だってあります。
「忍耐強い」と「何も感じない」を勘違いしてはいけないのです。

・・・色々とダラダラ書いてしまいましたが、以上が私の人生経験から言える事です。
この事が、少しでも作業ミスが減る要因になってくれると幸いです。